萬葉の浪漫への誘(いざな)い
2009/12/26
●世の中は空しきものと知る時し いよよますます悲しかりけり
●振り放(さ)けて三日月見れば一目見し 人の眉引き思ほゆるかも
(振り仰いで三日月を見ると、一目見たあの人の引いた眉の形が思い出される)
●なでしこがその花にもがな朝(あさ)な朝(さ)な 手にとり持ちて恋ひぬ日なけむ
(あなたがなでしこであってくれないものか。そうすれば毎朝、手に取り持って愛でない日はないだろうに)
子等を思ひし歌
●瓜食(は)めぱ 子ども思ほゆ 栗は食めば まして偲(しぬ)はゆ いづくより
来たりしものそ まなかひに もとなかかりて 安眠(やすい)しなさぬ
このほど、『小説 運慶』の著者でもある(既にご紹介ずみ)の、錦 和熙(かずひろ)さんが「萬葉(うた)よ永遠に─大伴家持物語」を出版された。市議会議員や「しんぶん赤旗」記者の経験を経て、いまは事務所でボランテイアにも精を出してくださっている。出版を祝い、一人でも多くの方にお読みいただきたいと、私も心から推薦したい本です。
「日本最古の万葉集の編纂に大きくかかわった大伴家持であることが、定説となりつつあるが、詳細な部分は未解明」「家持がどのような動機から、どのようにして編纂に当たったかを明らかにしよう」と試みたものだそうです。「家持は、謀反の罪を着せられ投獄されたり、幼くして両親を失うなど、想像を超えた苦難」にあっているが、そんな危うい状況の中で、編纂したとのことです。
いまの私たちと、万葉の人々の想いとには、相通じるものが溢れています。
短い言葉で余韻を残す万葉の響きに、少女時代の私が夢中になったことを思い出しました。是非、ご一読を。
○関連
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運慶 新たな発見 錦 和煕
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