クレジット・カードやサラ金で多重債務になったAさんはどうして生きていけばよいのでしょうか
私は、時々多重債務で困っている人(実は被害者)の相談に応じていますが、最近は実に深刻な人が多くなってきました。
例えば、Aさんの場合、Aさんは、身よりもなく1人でアパートで暮らしている高齢女性ですが、クレジット・カード会社やサラ金会社から次々とお金を借り、友人・知人などからの借金も含めると合計約350万円(利息制限法に基づいて利息を再計算した金額で)にもなっています。病気をして入院、働けなくなり、07年から高利のサラ金に手を出したというのですが、サラ金への返済ができず、サラ金会社やクレジット・カード会社からはもう借りられなくなりました。
それどころか、サラ金会社やクレジット・カード会社から毎日のように返済を迫る電話がかかってきて、居場所がなくなり、弁護士に相談しようかと思ったが、相談料を支払うお金もなく、人づてに無料で相談に応じている私のことを聞いて相談に見えたのです。
収入について聞きますと、年金と身分保障のない生命保険の募集で1ヵ月14万5千円程度です。Aさんの場合、毎月の家賃や食費や光熱費や電話料金などを計算しますと、医療費をゼロにしても、1ヵ月に債務の返済に回せるのは、約4万円程度です。
病気もせず、一切の無駄遣いもせず返済を続けるとしても、3,500,000円÷40,000円=87.5で、7年4ヶ月かかります。そうすると、Aさんは債務返済のために80歳を超えても働き続け、それまでには1円の預金もできず、親戚や友人・知人の冠婚葬祭費も一切使わず生きていくということになります。そんなことができるでしょうか。
債務を返済して再生するためには、特定調停という将来利息をゼロにして3年〜5年の分割支払を認める制度がありますが、私は、電卓で計算して、Aさんには特定調停は奨められないと思いました。また、調停委員もこんな長期間の分割納付は先ず認めないと思いました。自己破産がお奨めです。
しかし、Aさんが自己破産するには難点がありました。自己破産をすると一定期間生命保険の募集ができないのです。
私は、Aさんに「いまのお仕事をやめて他のお仕事をすることはできませんか」「今のアパートから出てもっと家賃の少ないアパートに移れませんか」と聞きました。Aさんは「70歳を過ぎた私にどんな仕事があるでしょうか」「転居したくてもお金がなくてできません」と、応えました。
それから、私はAさんに自殺したりしないで、生きていこうよと励ましながら、一緒にAさんの再生の道をもう一度検討し始めたのですが、もう特効薬はありません。
今はこのような1人暮らしの高齢者が何人もおられます。しかし、自公政権は、このような人に何らの手も差し伸べていません。自己責任を強調するのみです。麻生内閣は、Aさんに「早く死ね」というのでしょうか。
2009年6月3日
松戸市在住 堀越 静雄