元旦 京の千枚漬け
2010/01/02
おせちと一緒に、ヒヤリと輝く千枚漬けが、お正月の食卓を飾った。真っ白な雪のような蕪とうす紅に染まった蕪が重なり合って、暖かな部屋に冬の冷気を感じさせる。
何とか家族が、万障繰り合わせ久方ぶりに集ったね――と無事と元気を確かめ合ったのも束の間、元旦は、アッ言う間に時がたち、再び子どもたちは散り散りに帰っていった。その記念すべき食卓を最後に飾ったのは、京生まれの私の大好物、千枚漬けだった。さっぱりとした口あたりはしゃきしゃきと、皆に元気をくれた。その潔さがいい。
千枚漬けは、1865年 御所の料理人 大黒屋藤三郎が考案した、京都の代表的なお漬物。柴漬け・すぐき・千枚漬けと、京都の三大漬物のうちの一つらしい。聖護院蕪(かぶ)を、千枚に薄く切って酢漬けにする料理法で、11月から3月までの季節限定。冬の京都は、底冷えがして厳しい寒さ、その時期ゆえのものらしい。
こうして2010年は、家族との静かな語らいから始まった。それぞれの道を歩き始めている子どもたち、今年も新たな歩みを続けていくのだろう。家族一人ひとりの道が、太く確かな歴史の流れのなかで、大きく溶け合いながら、より豊かに広がっていくことを祈らずにはいられない。
子を振り返りながら、大丈夫?大丈夫?と確かめつつ親は生きてきたが、気がつくと、もうとっくに、親を追い越して子らが歩いていることに気づく。その後姿を追うのも楽しい。案ずる親の苦労は尽きないが、親を案ずる子も苦労であろう。何はともあれ、激動の2010年が始まった。
千枚漬けの冷たさに、温かい頬がひゅうっと引き締まった。
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