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タイトル 夜明け、そして和顔施(わげんせ) タイトル

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 目覚めて、空を見た。しらじらと夜が明けようとしている。薄紫の光に吸い込まれて窓辺に立つ。
 鳩が鳴く、カラスが鳴く、そして小さな鳥が鳴く。それに新聞配達のバイクの音が続く。

 昨日のことは、まるでなかったかのように、新しい始まりを感じさせる朝の街。
 車の音はなく、鳥たちが主役の、静かな朝。
 
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 テレビでは、紫の衣をまとわれた比叡山の天台座主(開宗1200年前の天台宗)=半田孝淳さんが語られていた。比叡山ときいて、京都出身の私は、今度は、テレビに見入った。

 静かなお説教かなと思いきや、実に激しい口調にまず驚いた。いったい、何のお話か。「……原爆と聞くと、何としても何としても……と、世界宗教サミットに行きました。先代からの教えをうけつぎ、絶対に戦争はいかんと……」と話される座主の握りこぶしが、紫の衣の下に二つ。両手でしっかりと、平和への高い決意を示されていた。
 平和の祈り――世界宗教者サミット(於フランス・リヨン)での体験について、熱く語っておられたのである。比叡山の風景が、私の脳裏によみがえった。

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 「ちちをかえせ、ははをかえせ(峠三吉『にんげんをかえせ』)、忘れませんな……」フランスでの集会で、会場の世界の人々が、全員立ち上がって唱和した感動を、「忘れませんな」と、繰り返しておられた。そして、ご自身は、比叡山宗教サミットを22回開き、平和のために続けているとのことであった。「世界から、いまだに戦争はなくなっておりませんが……」との司会者のコメントには、キッパリと座主は、「継続は力なり」と回答した。

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 説法は続く。「和やかな顔で、相手にとびこんでいく《和顔施(わげんせ)》を身につけよう」「五戒(《人を殺してはいけない》など五つの戒を保とう」と説かれていた。
 
――和顔施の心で、生きてゆきたい 街の朝―― あまねく、朝露が光っている。

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