「春の憂鬱」青紫のムスカリに魅せられ
2009/04/15
まあ、どうしたんですか。痛々しい……。事務所に入るなり、傷を負ったYさんの腕が目に飛び込んできた。美しい花が一面に咲いていて、それをデジカメにおさめようと身をのりだし、公園の柵が引っ掛かったらしい。
まるで童話のようですね。魅惑の花に誘い込まれたとか?……と冗談話で笑ったが、実際、花の名はムスカリですものね。名の由来は、ギリシャ語のムスク、麝香(じゃこう)のこと。花言葉は、失望・失意・憂鬱。その一方で、寛大な愛や、明るい未来という花言葉もあるそうだ。まるで正反対の意味をもつ不思議な花。
華々しい花を愛で、興じる人々の群れの横で、一つ一つはひっそりと、同時に一面に息づくムスカリ。青紫の春の憂鬱を漂わせる、それに魅せられたらしい。なるほど、分かる気もしますよね。人の心を落ち着かせる風情も……。地中海沿岸に咲く、別名ブドウヒァシンス。透明な青の世界に沈む心。
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