八月と『千の風になって』(08/08/01)
初めてこの歌を私が聞いたのは、2年前の8月。千葉県庁近くの公園にある原爆慰霊碑の式典に招かれたときです。
真夏の強い日差しがジリジリ照りつけ、蝉が鳴き続ける。喪服に身をつつんだ関係者が、慰霊碑に水をかける……。「亡くなった家族、残された私たち遺族の願いは、世界から核兵器をなくすこと。その日まで頑張る」。この短い言葉の重さ――ひしと、伝わりました。そして合唱団による歌――「私のお墓の前で、泣かないで下さい。そこに私はいません。眠ってなんかいません……」
驚いた。眠ってなんかいなくて、なんと千の風になって、あの大きな空を吹きわたっているという。秋には光になって 私を目覚めさせ、夜は星になって私を見守ってくれるというのだ。だから泣かないで、ほら、大きな空をふきわたる、千の風をみて! と。
私は、とうとうこらえきれず涙ボロボロ、来賓席にいながら。あれ以来、あのときの衝撃と共に、『千の風になって』を歌う私。今年も八月がやってきた。
――『千の風になって』=a thousand winds(作者不詳─日本語詩は新井満さん)――
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